不動産所有方式の論点のふたつめに土地の賃貸形態の比較が挙げられます。法人が銀行から借り入れして新築した場合、建物は法人所有、底地は個人所有となる場合が多いと思います。土地も法人に移管するのがベストですが、買取資金の問題で建物のみ法人所有となることが多いのです。
この場合、借地部分の取り扱い方法として、下記の4方式があります。
①の権利金方式は、借地部分を法人に譲渡する方式です。個人に譲渡所得または不動産所得が発生する可能性があり、また法人に買取資金が必要となることから選択しにくい形態です。
②の相当の地代方式は、借地を譲渡する代わりに地代(相当の地代=自用地評価額×6%)を受け取る方式です。しかし、地代が高く、所得をできるだけ法人に多く移転したい場合には不向きです。
③の無償返還賃貸方式は、将来、法人が個人に土地を無償で返還する旨の届出書(無償返還届出書)を税務署に提出し、賃借する方式です。具体的には法人は土地の固定資産税・都市計画税の2~3倍の地代を払います。地代が低いため、個人の不動産所得を低く抑えられ、法人はその分多くの所得を家族に移転できます。
④の無償返還使用貸借方式は、無償返還届出書を税務署に提出し、無償で借り受ける方式です。地代の支払がない代わりに、土地の相続税評価額は自用地評価となるため、小規模宅地の特例を適用できなくなるデメリットが生じます。
以上を総合的に判断すると、低コストで所得をできるだけ法人に多く移転させるためには、③の 『 無償返還賃貸方式 』 が最も効果的です。